「華氏911」

2004年8月24日 映画
井筒のオッサンがボロカスに言うてたけど、それも仕方ないような強引すぎる作り。彼の場合ドキュメンタリーではないのはいっこうにかまわないが、あらかじめ決まっている結論・主張に合わせて映像をはめ込んだようなかんじがいかにもで醒める。

フセインとビンラディンを悪の枢軸と決め付けたブッシュを同じように個人攻撃。階級社会や大国→小国の支配構造が戦争を産みだすと言っておきながらも、その構造的問題の解明をせずにブッシュや取巻きを揶揄・批判するばかり。
ブッシュの再選を阻止したいという気持ちの先走りがそうさせたのだろうか。仮に民主党が勝ったとしても戦争を産みだす支配構造は簡単には変わらないと思うのだが。

それでもイラク侵攻や住民・兵士双方の痛々しい映像は無知な自分にはかなりインパクトあった。
前半はブッシュのアホなキャラを茶化して笑わせておきながら、後半は例の突撃取材を絡ませて戦死した米軍兵士母親で泣かせる。パロディとマジメのバランスが悪くて心の置き処に困ってしまう映画だった。流行りモノになってしまった「商業映画」を涼しい映画館の中で眠気をこらえて観るという居心地の悪さ・・。せめてブッシュ政権に盲従する小泉政権に投票することだけは最低限やめておきたいと誓うのみでありました。
(☆3.5)
きのうWOWOWでやってた。劇場未公開みたい。

オープニングでレイ・チャールズがスタジオに現れて、クリント・イーストウッドとピアノを前に座ってトーク。以後いろんな人がイーストウッドと語り合う。ブルース探求というより、「クリント・イーストウッドとおじいちゃん達」なノリ。BBキングとか、ピアノマンじゃない人も出てくる。

レイ・チャールズ元気そうには見えたのだが、話の途中で何度も咳き込むんだけどタバコ吸ってるよ・・。オイオイ。これじゃ死ぬわな。肝不全らしいけど。

ファンにはヨダレものの映像もあるのかなぁ。出てくるミュージシャンが女の人も含めて太った人ばっか。食料事情いいのね。
ドクター・ジョンの演奏してるの初めて見た。学生の頃、細野晴臣マニアの人がいて、ドクター・ジョンまで聴かされたけど、こういう人だったのか。
イマドキのヒップホップやR&Bは好きなんだけど、昔のソウル、ブルースに遡るとイマイチなんだよね。どうしてわかんないんだろ。ブギウギとかビバップとかリズムがはっきりしていてノリのいいやつは楽しいんだけどね。
ストリート・ミュージックという括りでチャックDやコモンも出てたのはうれしかった。

WOWOWのブルース特集→http://www.wowow.co.jp/blues/

「箪笥」

2004年8月12日 映画
(ネタバレあり!)

売れ線狙いですね。
<解き明かされる家族の秘密>って全然解き明かされない。
怖がらせるシーンが多すぎる。「リング」かよ!って、そんなの全然いらない。

そんなことより家族の人間ドラマをじっくりやってくれたら泣けたのに。継母がキライっっていうのは、実の母が大好きってことだろうけど、そのあたりのエピソードがなんもなく最初から精神に異常をきたしている実母。

揺れ動く思春期を支えあう姉妹の結びつきにしても描写が足りない。回想シーンマニアの僕にしてみれば日本の2時間ドラマよりも足りない。

いくつのドンデン返しにはそれぞれやられてしまった。もともと「シックス・センス」、「アザーズ」系と思い込んでいたので的を絞れなかったが、終盤で父親が屋敷に招き入れる来訪者については当たらずとも遠からずだった。つまりそういう方向に絞れればおのずと答えは見えてくる。しかし、そんなドンデン返しよりも情念のドラマを見せて欲しかったのだ。

映像は綺麗で色彩感も良いのだが、マセラッティや西洋かぶれな屋敷の内装・調度品などが裕福な家系を想起させるわりに、それがストーリーに活かされていない。ありがちだけど、「家」の格式やしきたりが個人を抹殺するおどろおどろしさも好みなので。

役者はみんなうまかった。妹は演技力よりいたいけな佇まいが絶品。姉も喜怒哀楽の使い分けうま過ぎで将来楽しみだが入れ鼻ぽい鼻の高さにそっちばっか見てしまった。個人的には色っぽかった継母役のCXの島田彩夏がピカイチです。

文句は言ってもやはり韓国ホラーは水準以上に楽しませてくれたが、最近では「4人の食卓」の方が怖かったし、格が違うと思った。

それと、公式ホームページの日本語版はダメダメ。中身と関係ない外人のうるさい主題歌が流れて雰囲気ぶちこわし。韓国のHPの方を絶対見るべき。(☆3つ)
韓国サイトhttp://www.twosisters.co.kr/
こういう映画は無条件に楽しめばいいわけでいちいち難クセつけるのは無粋というもんだが、それにしてもバランスが悪い。

主役のトニー・ジャーは顔の演技はまだムリなのか、人なつこい笑顔を見せたブルース・リーほどの表情は作れない。それを補うのが同郷出身のチンピラ・中村梅雀なのだが、泣かせの勧善懲悪も、村を飛び出した背景などいまいちわからず感情移入できない。

かと思うと敵ボスもたいしたことなくて、悪いことはしてるのだがその見せ方がダメ。たまに見かける(昔アンディ・ガルシアが変装してやってた)喉に発声装置つけてしゃべるキャラだけど声は変わっても抑揚は出るはずで、「平成教育委員会」みたいなコンピュータ・トークには苦笑。

格闘のバランスも、一撃で倒したかと思うと、モロに膝や肘が入ってもまた起き上がってきたり、どうもスッキリしない。一撃必殺の方が凄みが出ると思うのだが。痛さはものすごく伝わってきました。ホントに当ててんの?

ムエタイの独特の動きやスピード感は新鮮だったけど、ストーリーはかなりダメダメ。

笑い(ジャッキー)なのか熱血(Bリー)なのか焦点を絞ってくれたらもっとイケたのに。

日本も仏教あるけど信仰心の度合いが違うので、仏像の奪回に命を賭けると言い放つとこやピンチに仏像の顔見て闘志が復活することなどただただ驚嘆して(笑って)しまった。

いや、十分に楽しませてもらったわけですが、昨年の「少林サッカー」同様に映画秘宝的なノリで礼賛一辺倒な風潮にヘソ曲げたかっただけ。
☆3つ)
妻につきあわされて見た。続編はどうも乗り気がしない。どうせなら「スパイダーマン2」見たかったな。

新キャラの殺し屋ネコが全然ダメ。必殺技だけは笑えるが、その他の部分ではキャラが立っていない。その分前作で爆発したエディ・マーフィ・ドンキーが出演時間の割り食ったかんじ。

かわりに今回のブレイクは国王と妖精ゴッドマザー、あとピノキオあたりか。悪乗りのパロディネタがガンガン出てきて笑わせてくれたけどストーリー的にはどうでもいいかんじ。

CGはさらに細かくなっていて、見せつけるためにわざわざ突っ込んだような髪の毛フンワリのスローモーションとか、国王の表情の質感とかがリアルでビックリ。
(☆3つ)

「浮き雲」

2004年7月20日 映画
なんだか「過去のない男」を追体験してるようだった。似たようなパターンでほとんど同じ役者。やっぱ先に見ておくべきだった。

「過去のない・・」の方が後発なだけに、記憶を失くしたりとか前の家族のこととかヒネリが効いてるけど、こっちは一直線に職を失って貧乏のズンドコ。自分も失業してプーだった時代があるし、今勤めている会社もかなり傾いているのでズシンときた。明日から実直に努力しよう!と思わせる良い映画だった。たぶん明日には忘れてるが。

主演の女の人、「過去のない・・」よりもエモーショナルなかんじで良かった。画面の色合いもすごくキレイ。それから例によってレストランのライブのシーンがあってここでの歌もじわ〜んときました。

カウリスマキで見たのは他に「レニングラード〜」の1作目と「コントラクト・キラー」だけなんだけど、とぼけたユーモア、ペーソスだったのがどんどん濃い味わいになってきて人生の○○○○そのものに煮詰められているかんじ。○○○○って言葉が浮かんできません。あ〜オレの人生って薄いのね。(☆4つ)

「シルミド」

2004年7月8日 映画
昔の東映映画のようなノリでございました。てゆうか配給は東映だった。

最初から最後までテンション絶頂なので疲れる。大袈裟な音楽が始終タレ流し。最初の5分くらいでもうダメダメなかんじ。ベテラン監督らしいので最近のニューウェイブな韓国映画とは全然違ってた。

2時間越える長さなのに主要人物の背景を描く人間ドラマがほとんどない。主人公の一人、第3班長の父親が北に寝返った軋轢が明かされるのはやっと半ばを過ぎてから。他の主要キャストに至ってはほったらかし。これでは泣けと言われても泣きようがない。

軍と中央情報部のご都合主義な官僚体質についてもえぐりが足りない。熱い男の野郎映画として楽しむ趣向もあるだろうが、史実を基にしているだけに劇画調の演出は適切ではなかったと思う。

「火山高」の悪いハイパーおにいさんが、教育する側の熱血漢でおいしい役どころだった。この人ミョーに印象のこる。
(☆2つ)
シネスイッチの最終日に見た。団体で来ているのか、おじいちゃん、おばあちゃんで満席だった。

たくさんの人にやさしく看取られながら死ねるなんて幸せですよ。と思いながらも痛みや苦しみが無いのなら一人で安らかな死を迎えたいとも思う。

<好色な社会主義者>は愛すべき人物だったけど、意外に普通な人だった。息子が金持ち証券マンで何でも金で解決するのが少々鼻につく。結局金のおかげで幸せな最期を迎えられたわけだし。BMWが出てきたとたんにヒガミでヤな気分にはなった。

すべてが奇麗事のように丸く収まってしまうが、それも許せてしまうやさしくウィットに富んだ会話と演出。 出てくる固有名詞がおもしろい。クリス・エバートは僕も子供のころ憧れた。「アスタラビスタ」に「ベイビィ」で答える合言葉とか細かくくすぐってくれる。

ヤク中役の女優さんの目線がすてき。おいしい役どころではあるけど、カンヌで主演女優賞もうなずける存在感でした。

全体に、リアルよりもファンタジーに振った演出と割り切れば楽しめる内容だった。ハリウッドとは違った独特の語り口にはまったかんじ。
(☆4つ)

「クラッシュ」

2004年7月2日 映画
公式HP→http://www.bestlife.ne.jp/crash/

WOWOWで見た。カーレース好きの弟に前から薦められてたが、あの奥山監督ということで色メガネで避けてた。何気にテレビで見たがかなりズッシリきた。

何より事故映像の火柱が衝撃的。衝突時に相手の車のガソリンをもろに被ってしまったらしい。

その後の臨死体験の話や火傷で再生しなくなった皮膚を剥がす話など見ているだけでヒリヒリしてくる。

「殺さないでください」と生きることを選び、立ち直った太田氏も凄いのだが家族の話も印象的で、特に幼い長男の「どんな顔でもパパ」だという毅然とした言葉には胸打たれる。しかし、さらに幼い長女は包帯だらけの父親を見てショックで拒絶してまったりというシビアな現実も突きつけている。奥さんもしっかりした口ぶりで、家族の絆が彼を再生させたのがよくわかる。若い頃はモデル級な美人だろうと思わせる美貌だが、苦難を乗り越えてきた強さを秘めた生活感のある美しさというか、魅力的な人だった。

淡々と進む展開だが、ナレーションやテロップが恣意的で音楽もセンチメンタルに流れすぎな気がする。メインテーマが繰り返し流れるのはしつこい。(この曲、良過ぎるよ)映画の出来としては特に良かったり悪かったりは無かったが、とにかく題材が衝撃的ということに尽きる。

このレース事故については主催者の安全対策をめぐって訴訟裁判が係争中のようだ。

裁判資料をまとめたサイト→http://www.r-style.to/980503/index.htm

太田氏支援サイト→http://www.r-style.to/kor/

「白いカラス」

2004年6月29日 映画
よくわからない映画だった。

アフリカン・アメリカン(黒人と呼ばれる方々)が見たらアイデンティティを傷つけられたようで不愉快なのではないだろうか。コールマンの付き合ってきた女は白人ばっかで、最後に告白はするものの、フォーニァに対してだけで家族や大学への落とし前がついていない。終盤いつの間にか作家の視点に変わってしまい、二人の最後の恋のゆくえが放り出されたような肩すかしのされ方。

最初に事故シーンが出てきて、「21グラム」のような時制錯綜パターンなのだが、丁寧に解きほぐされるべき心情や過去が簡単にセリフだけで片付けられたり唐突な進行にとまどってしまう。

役者の演技はさすがの存在感だが、やはりミスキャストに思える。ホプキンス自体はもろ白人に見えてしまうのは仕方ないとして、回想シーンだけでなく現在の生活でも隠しとおす苦労や葛藤をもっと織り込むべきだったのでは。メイクやつけ鼻などなくても演技でそれ以上に見せることのできる人だと思うので脚本の描き込み次第ではもっと説得力が増せるはず。

キッドマンはとても学歴のない(原作ではそうなってるらしい)女性には見えない。夫の暴力など回想シーンがないので見せ場少なくかわいそう。そのかわりに唐突なハダカと取ってつけたような喫煙シーン。明るく幸せいっぱいな人だってタバコ吸うんですよ。ステレオタイプな小道具の扱いはいいかげんにしてって感じ。

文句言ったけど、映像や音楽はなかなかに良くて、回想シーン(若いとき)のラブシーンも良かった。ああいう脱ぎ方は大好きです。逆にキッドマンはベッドで全裸で横たわるより立ち姿の背中で語って欲しかった。二人が車から部屋に入るまでの駆け引きの間の取り方も絶妙だったし、その際キッドマンが背中の表情でコールマンを引き寄せていたので部屋の中でも同様に背中で語って欲しかったのだ。

字幕を追うのに精一杯でラストの残された二人の含みのある表情を見逃してしまった。セリフを読んでもよくわからなかったし。原作は名作らしいのでそれを読めばナゾが解けるのかもしれないが、たぶん僕もフォーニアと同じく読み書きに疎い人間なので本を読むこと無く死んでいくのだろう。
(☆3つ)
やっぱこの邦題はナシでしょ。

出だしはいかにもなプレイボーイぶりに笑ってしまったが、だんだんとツボを突かれて涙ボロボロに。 いいオヤジがOLやオバサマだらけの映画館で必死で嗚咽をこらえる姿ってどうよ。

ラブシーンが一番泣けた。やらしく深読みすると根底に流れる儒教思想というか、やっぱ清楚な純愛、従順な女が好きなのね自分も。まだまだ青い。あっちの姉さんも美人で良かったがラブシーンないんだもん。

正直、「愛あるセックス」にあこがれます。だってオレって・・(以下省略)。

王朝貴族の華麗なクラスライフ。映像も音楽もきれい。 ベタなようでいて客観視な部分もあり、終盤にカメラが追う人物が切り替わるのでちょっと感情移入しづらいものの、また韓国映画にやられました。(最後の最後にもオチがあった)

16歳の設定はムリがある!とか、落ちる過程はしょり過ぎとか、従姉妹美人のラストも唐突すぎる!とか、そゆことは言いっこなしで。

もちろんヨン様(松尾スズキ)もステキだった。あの腰づかい・・。
(☆4つ)

「下妻物語」

2004年6月18日 映画
昔、学生時代に取手の子にホンダ・シティに乗せてもらって牛久シャトーに行った時のことを思い出した。のどかな田園風景だったなぁ、下妻じゃないけど。

なんか秘孔を突かれたように大笑いしました。オープニングの事故回想シーンで「21グラム」なのか?と思ったが、その後はバリ飛ばしまくり。みんな濃いキャラの上に芸達者な面子なので笑えるのは当然だが、その中でも土屋アンナのキャラが新鮮でマジ笑える。

ただ後半はお決まりの青春チックな男の、いや女の絆に昇華されてしまい、メンツ的にも落としどころ的にも「IWGP」や「木更津キャッツアイ」とかを彷彿とさせてしまう。自分の中では「IWGP」を超えるものはないと思い込んでるだけに、前半の疾走感溢れる笑いを保ったままクライマックスへなだれ込んで欲しかった。表層的軽薄な笑いで良かったのに直球な青春にシフトしてしまったのは残念。

なんだかんだいいつつも泣けたんだけど。

深キョンがまた猛烈な当たり役。ガッチリ太い二の腕にゴスロリなフリルがパーフェクトにはまる。土屋アンナにも惚れた(妊娠・入籍ってマジショック)し、最強コンビかも。

ちなみにジャスコは近所にないのでもっぱらマルエツにお世話になってます。(☆4.5)

「パッション」

2004年6月12日 映画
どうも考えがまとまらないのだが、メモ的にダラダラ書いておく。

子供のとき教会の日曜学校に近所の友達に誘われて行ったが、配られたお菓子の取り合いでケンカして二度と行かなかった。そんなバカで野蛮な子供だったので、以来聖書を読んだこともないし、映画のストーリーの前設定や、ときおり挟まれる福音書のエピソードもよくわからない。それでもいろいろ考えさせられて面白かった。

キリストは、啓示を授かった神の子として見えた。だから救済の使命を受けてすでに世俗を超越した存在であり、鞭で打たれようと杭で手足を貫かれようと人間的な痛覚はすでに放り去っているのだ。
延々と、しかもスローの多用やしつこい音楽やられるので見ているうちに麻痺してきた。ちっとも痛くない。

痛いのは彼を取り巻く人間たちが、怒りや憎しみ、嘲りなど、ひたすら人間としての負の感情を剥き出しにするところ。汝の敵を愛せよ。って言うけど、愛というよりも赦す、あるがまま認めるってことだろう。そういう境地になれば争いはなくなるかもしれないが、人間が人間である所以であるところの感情の起伏を否定することになるのでは?

短絡的だけど、「2001年宇宙の旅」で宇宙の意識と一体化したスターチャイルドが時間や場所の概念を超越して“ただ居続けた”ような状態になっていたが、やっぱアレしかないのかなぁ、というかんじ。いま人間はそれぞれ自分の内なる小宇宙でもがいているが、そんなこと宇宙船から地球を眺めるとどうでもよくなるのだろう。

クリスチャンが作った映画として、人類の罪を一身に背負ったキリストの偉大さは十分に伝わったけど、社会的集団としての人類の救いのないしょうもなさも十二分に思い知らされてしまった。キリストは好きでも人間はキライなんじゃないかと思わせるような厭世観。そんな中で聖母マリアの、母性愛に溢れる感傷的な描き方はいらんかったと思った。意味がわからん。じゃま。

ラストで復活するキリストは、人間を超越した存在として位置づけるるためと思えばうなずける。処刑されるまでに受けた迫害の数々もきれいに清算されるのだ。愛とか赦しでもなく、ただニュートラルに戻る。そんな感じがいいです。

映画としてベタベタな出来だったけど、無知な自分にも少しは人類の行く末を考えさせてくれたので良い映画だったです。
(☆4つ)

あ〜、やっぱダラダラ長い。あとで書き直そう。
<ネタバレあり!>

まんまと騙されたんだけど、それが快感かというとそうでもない。むしろひっくり返して欲しくなかったかも。

虚構世界の出来事かと思うと、女の情念のリアリティが薄まってしまう。娘のおなかの傷や母親の死因など、せっかくの情念ネタが台無しな気がした。それもこれも勝手に思い込みした余裕のない自分が悪いのか・・。

ランプリングの<大サービス>には驚いたが「まぼろし」よりさらに老けて、顔だけ見ればおばあちゃんに近い。役柄的にも老醜さらすから仕方ないけどちとショック。

サニエのオッパイは見事だったけど、胸のド真ん中が骨っぽいのでどーも怪しい。近頃は技術が進化してるので見分けにくいせいか、どれも入れ乳に思えてしまう。仰向けでもつぶれないのは若さのせいだけではない気が・・。

中盤まではかなり惹き付けられたが、まとめが強引かつ騙しすぎな感じがしました。「まぼろし」では深いエモーションってやつがあったんだけど、これは・・。

(☆3つ)

「4人の食卓」

2004年6月5日 映画
またもや打ちのめされた。「殺人の追憶」に続いてまたもやただごとではない映画を見てしまった。見た目はともかく通常のホラーとかスリラーといった映画ではなかった。女性監督のデビュー作だそうだ。

途中までは異様な緊迫感の中で徐々に過去の記憶がほぐされていく。「シックス・センス」タイプ?とか思ってると最後にまた放り出される。

概ね不評なようだけど、タイトに編集して最後にドンデン返しと謎解きをきっちり付ければ普通の娯楽映画になってしまう。(それでも十分すごいけど)チョン・ジヒョンを起用しても商業映画にしなかった根性がえらい。

劇中ほとんど音楽使わず無音のテンションがキリキリさせるのだが、ここぞという所でカマされる不協和音のSEも怖い。正直ストーリーは未だにわけがわからないのだが、映像と音を追っていくだけでお腹いっぱいだ。

僕の喉のつかえを取ってくれたレビュウがあった。よく見に行く〔粉川哲夫のシネマノート〕http://anarchy.k2.tku.ac.jp/japanese/cinema/notes/2004-01.html やはり「殺人の追憶」同様に<前近代の揺れ戻し>。非日常な不条理の迷宮のままで正解なのだ。43歳の自分にはすごく納得のいくレビュウだった。

余談だが、この監督名前がイ・スヨン。もしかして人気歌手のLee Soo Yougかと思ったら違ってた。それでもインタビューとか見ると若い。すごいなぁ。
(☆4つ)

「21グラム」

2004年5月26日 映画
絶対にこの世に神なんかいない。

そう思わせるほど三人三様に悲しすぎる。

「アモーレス・ペロス」見てないんだけど、これも同じく時間軸バラバラ。はじめの方はまったくわからん。こういうスタイル好きだけど、今回のはどうなんだろ?まともにやったらかなりベタベタな悲劇になっちゃうけど。

ナオミ・ワッツがもうけ役というか裸までさらしての熱演。しかし、3人の中で一番無表情だったデルトロにまたもやノックアウト。なんでこんなに可哀想なんだろ?涙出まくり。

しかしいつになったら痩せるのか・・。

ここまで救いが無いと映画としてもつまらないし、ポールがクリスティーナを好きになる理由が明確でないこと、クリスティーナが被害届出さないって言ってたのに唐突に殺意を剥き出しにするところとか、展開が強引なところもある。しかし、序盤の意味不明な画つなぎからもただごとでない緊迫感が漂ってきてグイグイ惹き付けられた。

三人とも思いっきり悲劇の当事者なのだが、S・ペンだけがどこか所在なげで最後の独白(追想?)含めて魂のありかが虚ろになっている。最後は語りで締めちゃったのは困ったが彼の存在が、単純な悲劇で終わらずにこの世とあの世を徘徊させる案内人のような深みを出していると思う。

音楽がとてもいいです。他所から引用するとこんなかんじ
「ブルージーなギター・ドローン、ブレイクビーツにフォルクローレやタンゴのエッセンスを注入した前衛南米叙情詩が、登場人物のダークな心象風景にひっそりと寄り添う。」 長屋美保氏

(☆4つ)
WOWOWで見たが3時間でも足りなかったみたい。

いい人の役しかできないと思ってたダニエル・デイ・ルイスの怪演に轢き付けられっぱなし。映像もきれいで金のかかったスケール感は堪能できたが、いかんせんドラマが・・。

編集の都合なのか、終盤は二人の心情描写ないまま闘いに突入。回想シーンもいっかい挟むとかして欲しかった。軍艦から放たれた砲弾には頭きた。じゃますんなよってかんじ。激動する時代の流れも、ニューヨークの街のバイタリティも、男の生き様も全てが中途半端だ。キャメロン・ディアスなんか色づけで出すなら邪魔なだけ。

エンディングでU2が流れたらますます白けた。しょぼい曲でいかにもお約束でまとめた感じがする。撮影が長引き、コストやスケジュールのしわ寄せがきたのだとスコセッシをかばいたいけど、かなりガッカリした。
(☆3つ)
最初のうちはなんだか「フォレストガンプ」みたいなかんじ。

そのうち断絶してる父と息子の邂逅の話と判り、かなりスケールダウン。ティム・バートン、ますます幼児化してるというか、現実逃避を正当化してる。自分の妻を「only one」って言ったり判ってないというかありえない。

ブシェーミやMr.ペンギンが出てたり、人工美な美術装飾のセンスはさすがティム・バートンな世界だが、話が小さくまとまって彼特有の毒が無い。音楽なんかストリングスとピアノが始終品良く流れて、最近で言うと「シービスケット」なかんじでハリウッドぽい偽善が鼻につく。

脚本や製作に本人が噛んでいないのでやっぱ独自色が薄い。もっとインディ系からでもいいから好き放題に作った映画を見せて欲しい。(☆3つ)
今回は筋の通ったラブストーリーで、破天荒な楽しさより辻褄合わせにこだわるオジサン的にはこっちの方がまだ納得できる。ヘンなオリエンタルが白ヒゲじじいだけだったので、微妙な苦笑いは少しで済んだし。

それにしても冗長な展開でセリフがタラタラ長い。映像的にけっこうきれいだったのにカットを切り替えていくリズム感が出ない。さしたるドンデン返しもないのでなおさらダレる。

音楽はときおりラテンのデスペラードになった。ロドリゲスも参加ですか。残りのオールドソウル趣味はRZAと真っ二つに割れて整合感がない。GZAのソロ「Liquid Swords」で使われたのと同じ「オレのとうちゃん有名よ」のサンプリングが使い回しされてたり。

非情な殺し屋同士の闘いなのに敵に塩を送ったりスキだらけだったり、どれをとっても締まりがないというか、ソリッド感がありません。従来のタランティーノ節をいつまでも期待してるこっちが悪いんですかね。(☆3つ)
ポレポレ東中野に行ってきました。最終日に会社抜け出して。

思っていたよりも生死の境ギリギリな現実を叩きつけられ、かなり凹んだ。場内ではあちこちで笑い声もあがったが、とてもそんな気分にはなれず。

この人、しゃべり方とか頑固で偏屈なところ、難聴なところなど僕の父親そっくり。まだ健在だが行く末を見ているようで笑っている場合じゃなかった。
とにかく世話をしている人たちには頭が下がります。本当に人を好きでないとできないし、好きなだけでも勤まらないと思う。路上で寝てる人を見かけても素通りしてしまう自分にときどきイヤになるけど、善意とかヒューマニズムだけでは対処できない深刻な社会問題だなと痛感。小泉首相や石原都知事にも見て欲しい。

昔、浜町にある会社に勤めてたとき、土曜の午後にみんなで隅田川に繰り出してハゼ釣りしたけど、川の遊歩道一帯はホームレスの青シートが林立。すごいなぁと思ったが、その後自分もリストラ食らいその会社は消滅。他人事ではなかった。

いっときホームレス願望もあった自分だが、深く反省しました。
映画の後で監督の挨拶があって、それ聴いてたら急に涙出ちゃった。この人あたたかいよ。

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